- 2024. 03. 01
島町より愛をこめて「HARRISONS‐SEA SHELL」編
時には生地の話をしたい、島町洋服の中村です。
…って基本的に生地の話ばかりですね。仕立ての話もまたいずれ。
とにもかくにも今回は
隠れた名作 HARRISONS / ハリソンズ の SEA SHELL / シーシェルについて。
どうぞ、一席おつきあいください。
2024年にリニューアルデビューしたサマースーツファブリックのシーシェル。
お名前にちなんだポップな貝殻のイラスト、トロピカルなブルーから始まる見本帳を眺めていると夏が恋しくなってまいります。
TERYLENE / テリレンと麻を合わせた平織り生地。
麻素材そのものが、「通気&吸湿&発散性」に優れ、「丈夫さ」まで兼ね備えていることに加えて
麻の糸の特性といえる、ナチュラルな凹凸を活かした「ドライタッチ・肌離れの良い」テクスチャが盛夏の仕立てにピッタリです。
ただ、リネンと聞くと気になるのはシワでございます。
世紀末アナーキーテーラー島町洋服としては
「麻のスーツのしわを味わっているうちはまだまだ。真の兵(つわもの)はシワの存在を感知しない」
と断じておりますし※1
ジョンレノンも「Imagine there’s wrinkles」と歌ってたり※2
日本書紀にも「一書に曰く、麻の衣のしわから生じた神あり、名をシブキシワノカミ」との伝えがあったり※3
結論、シワ入ってても大丈夫なくらいカッコよい仕立てとコーディネートすれば大丈夫だよ!
っとご案内したいところでございます。
※1:中村の独断と偏見です。
※2:これに至っては嘘です。
※3:これも嘘です。かしこみかしこみ。
とはいえ、シワがやっぱり気になるBOYS&GIRLSの皆様。
そこで効いてくるのが「テリレン」なのです。
ごめんなさい。満足しました。
はい!テリレン!
ポリエステル系繊維をさす名前でございます。
いわゆる化学繊維、シワになりにくく、軽量で染色にも適しています。
シワになりやすい麻と、防シワ性能に優れたテリレン。
相反する二者が織りなす一着がシーシェルというわけでございます。
その魅力を英語でご案内するとすれば
「Linen has a tendency to wrinkle, whereas Terylene does not, so blending the two fibres creates a crease-resistant fabric with the incomparable look of linen.」※4
ってことです。YES。
※4:HARRISONS社のHPより
「麻でしか表現しえないビジュアルと、防シワ性を兼ね備えた生地だぜ!」とのこと。
シワになりにくいリネン…魔法のような生地でございます。※5
お値段的にもハリソンズブランドの中では可愛げのあるところでして
税込のスタートプライス、スーツで110,000円、ジャケットで82,500円、スラックスで38,500円でご案内いたします。
この度のリニューアルで、ダークトーンのバリエーションも増えたため
リゾート・レジャースーツだけでなく、ビジネススーツとしても選択肢が広がりました。
休日をエレガントにすごすレディース&ジェントルメン、お仕事服にクラシックな個性を取り入れたい紳士淑女の皆様におススメでございます。
※5:とはいえ、普通にシワは入る印象です。
しかしながら生地の厚みも相まって、「深く入らない」のが嬉しいところ。
マットで凹凸のしっかりとしたテクスチャで、シワ自体が目立たないことも含めて「シワになりにくい」生地とご案内して差し支えないように思います。
そんな機能面での優位性もさることながら
「UKファブリックで取り回しの良いリネンスーツ」を仕立てられることが最大の魅力。
重ね重ね、おススメ!でございますよ。
例のごとく、まずは下見がてら見本帳をペラペラしにいらしていただければ幸いです。
かしこ
‐以下オタク用‐(ここからはマジで無駄話だよ。シークバーの位置で笑えたあなたに乾杯。)
<55% Terylene & 45% Linen 12/13oz-360g>
メーカーであるHARRISONS社のHPに、SEA SHELLの紹介は24年2月末時点で無い。
※4で引用したページも”更新前”感が否めない状況である。
☆(3月1日に更新されてました!)
ラグジュアリーに傾倒し過ぎない、デイリーウェアとしての仕立てを楽しめる一着として最高に魅力的で
70年代のロンドンのカルチャーとヒストリーをリアルに身に着けられるロマンも感じられる生地なので
本国からのリコメンドを楽しみに待ちたいところ。
ちなみに、HARRISONSグループのディストリビューターのマルキシさん。
製品の説明をかなりしっかりしているマーチャントで、SEA SHELLの紹介もこちらにはある様子。
そのままコピペするだけでリコメンドブログが書けてしまう優れもの。流石だよね。
…でも、そこまででお終いだと、服屋さんとして寂しかないでしょうか。
Google先生やらX(旧姓 Twitter)先生に聞いて、すぐにアクセスできる情報じゃ満足できなくない?
オタクらしく深堀りしつつ、そんなの知らない顔して、さらっとしれっとお洒落してる”真のヤバい奴”がやってるお店を目指す当店として、そこで終わっちゃいけない気がしております。※6
(もちろん、好きかどうか、カッコよいかどうか、それが一番大事なんですけどね。)
※6:中村の独断と偏見です。
というわけでですね、上記のマルキシさんの紹介にあるこの一文に注目です。
「1970年代にロンドンで一世を風靡した、伝説的なリネン混生地が復活。」
伝説的な一世風靡っぷり、実際どんな様子だったのでしょう。
カルチャー&ヒストリーを織り込んだ仕立てをご案内するために、ここは深堀りポイントかと。
そこで不肖中村、伊達に仕立て屋界のインディージョーンズを名乗ってはおりません。
寒風吹きすさぶ2月下旬、我々は西欧文明未踏の秘境、アマゾンの奥地へと向かいました。
暖房の効いた部屋で、ネットやら本やらを調べました。
結論から申し上げますと「全然、分かりませんでした。」
すみません、インディージョーンズは一旦返上します。
(現在空位なので、心ある仕立屋さんどうぞ。)
SEA SHELLが伝説を築いた1970年代のロンドン、資料をいくら辿ってもそれらしき記述は見つからず…。
古着屋さんに流れ着いた既製品のウール&テリレンスーツや、キッチリネンを発見するものの、仕立て服に関する情報は皆無です。
(そろそろ公開したいし、またあんまり長く書いても怒られるし、とりあえずここら辺でお茶を濁して)万事休す、かと思われたその時でした。
一枚の写真が目に留まりました。
三茶の古着商「NOIR」さんにてお取り扱いがあった60年代のジャケットのタグ。
リネンとテリレンで織られたSpringbakなるファブリックを作っている生地ブランドの名前をご覧いただくと…「MOYGASHEL / モイガシェル」とございます。
シーシェルと同じ混率で織られて、60年代から70年代に生産されていたモイガシェル。
……そうか!そういうことか!
流石の島ちゃん。
西の服部、東の工藤、仕立屋の中村と並び称されるだけあって、真実にたどり着いてしまいました。
その真実っていうのはね。あのね、