• 2024. 01. 08

島町より愛をこめて「時には生地屋の話を‐HFW‐」編

時には生地の話をしたい、島町洋服中村です。
『羅紗屋(オーダースーツの生地屋)出身のナイスガイ』を標榜しておりますので、一席お付き合いいただければ。

※お読みいただく前からちゃぶ台返しも甚だしいのですが…。
今からご案内する背景知識やこぼれ話、私を筆頭にオタクは大好きなわけです。
でもね…そういうの知らない顔して、さらっとしれっとお洒落してる奴にこそ”真のヤバさ”を感じやしませんか?
まずは一旦、用法用量をガン無視して書きますので、各自うまいこと希釈して頂ければ幸いです。
だって結局、好きかどうか、カッコよいかどうかじゃん!

どんな服が好きか、一番カッコよいかね、決まるまでやりゃあいいんだよ。決まるまで。

はい。というわけで、タイトルのHFWさんをご紹介して参ります。
Huddersfield Fine Worsteds / ハダースフィールドファインウーステッズ の頭文字をとってHFW
世界の英国生地好きをうならせ続ける、生地産地「ハダースフィールド」を名に冠するブランドグループです。(しれっとイタリア産生地もラインナップされてたりするけどね…!)

ハダースフィールドのそもそもの所在ですが、ロンドンから北北西に4時間ほど車をかっ飛ばしていただく先にあるとご記憶いただければ、お洋服知識としては十分でしょう。
石灰質の山脈に洗われたクリアな水がたっぷりとそそぐ2つの河川が合流する当地。
機織り業が栄えるうえで必要不可欠な条件「水の量と質」に富んでおりました。

14世紀には既に機織り職人たちのギルドが存在し、産業革命を経て現代にいたるまで、毛織物分野の技術と知識が蓄積されていました。
HFWに限ったことではございませんが、ハダースフィールド産の生地は世紀をまたいだ研鑽の賜物とご案内して差し支えないでしょう。

冒頭、ブランド”グループ”とご紹介しましたHuddersfield Fine Worsteds 。
羅紗業界における「ジャスティスリーグ」的な存在なのです。
※中村的にLBD.HARRISONSグループが「アベンジャーズ」です。

Broadhead & Graves / ブロードヘッド&グレイブス
1830年代に創業の超老舗毛織ブランド。
名だたるメゾンブランドにも生地を供給しており、ジョン・F・ケネディ大統領が就任式で着用したコートの生地を生産していた。

Josiah France / ジョサイア フランス
ハダースフィールドのほど近く、ホルムファースのホンリーに拠点を持っていた毛織ブランド。
ホンリーの機織りの歴史も古く、14世紀にさかのぼる事ができる。グループ内でも屈指の歴史を持つ。

Learoyd Brothers / リーロイド ブラザーズ
ゴールデンベールの選定者として有名なテディ ラム氏がオーソライズしていた「Super 100’s club」のメンバー。
保有していた機織り工場「トラファルガーミル」には、エリザベス女王が訪れている。

当店ビンテージコレクションの中のLearoyd Brothers

Martin Sons / マーティン サンズ (マーティンソン)
ハイツイストの平織り「フレスコ」が洒落者を魅了してやまない、HFWグループ結成発起人の一社。レーガン大統領もお召しの名門ブランド。(なお、おろしたその日に銃弾で穴をあけられた模様。)

冒頭の紺ブレに続きグレナカートスーツも。マーティンソンネームのフレスコ。

W E Yates / W E イェーツ
1894年創業。毛織よりもさらにさかのぼって、原毛から糸を紡ぐ紡績企業。

John G Hardy / ジョン G ハーディー
ロイヤルワラントを戴くカントリーツイードの逸品「アルスポート」や上質なコーデュロイを取り扱う生地商社。

ちなみに、ジョン G ハーディーの「ハーディー」と J&J ミニス の「ミニス」で「ハーディーミニス」なのです。

Hunt & Winterbotham / ハント&ウィンターボサム
エクスクルーシブのハリスツイードコレクションは圧巻のバリエーション。
ロンドンは勿論、NYやビバリーヒルズにも所在したグローバルな生地商社。

J & J Minnis / J&J ミニス
サヴィルロウに拠点を持っていた、英国最古の生地商社の一角。
同社の傑作クオリティ「クラウンクラシックス」はイングリッシュテーラリングの”歴史と伝統の結晶”。

読み飛ばさなかった貴方に感謝を…。
こういった具合に、「紡績工場」「機織り工場」「卸売り商社」が織りなすグループなのです。
糸の生産から生地のデザインと生産、ブランディングと流通のプロフェッショナルの集い…死角無しやね!

上記の様に、もとより違う会社の集まりですので、個性もバラバラです。
一概に「HFWの特長は…」的なまとめ方ができないのが歯がゆいところ。
しかしながら、そこは百聞は一見に如かずでございます。

えー、何故か極東の小さなお店に現在ほぼ全量のバンチが集結しております。
この棚だけ実質サビルロウです。ありがてぇ。ありがてぇよ。

先述の通り、個性もバラバラなバンチ達でございます。
おすすめの仕立てやTIPSについては各バンチごとに記事にできればと思っています。
オタク全開にならないように自重しつつ…時にはね、生地屋の話も。

かしこ